タングステン高騰と超硬工具の設計

切削工具のコストを見直す際、「工具価格を下げること」だけを考えていないでしょうか。

特に超硬工具は、耐摩耗性や剛性に優れ、安定した加工を実現しやすい一方で、ハイス工具などと比較すると材料コストが高くなります。また、近年はタングステンなど超硬の原料価格上昇もあり、工具にかかるコストを改めて見直したいというケースも増えています。

しかし、コストを下げるために単純に材質を変更してしまうと、工具寿命の低下や加工精度への影響など、別の問題につながる可能性があります。

そこで重要になるのが、**「超硬を使わない」のではなく、「必要な部分だけ超硬を使う」**という考え方です。

今回は、超硬工具の性能を維持しながら、使用する超硬量を減らすことでコスト低減を検討した事例について紹介します。

超硬工具はなぜ高くなりやすい?

超硬工具は、主にタングステンカーバイド(WC)を主成分とする硬質な材料で作られています。

高い硬度と耐摩耗性を持つため、鋼などの難削材や量産加工において安定した加工を行うための重要な材料です。

一方で、超硬はハイスなどと比較して材料自体のコストが高く、工具形状によっては、その材料費が工具価格に大きく影響します。

例えば、工具全体を超硬の塊から製作する「ソリッド構造」の工具では、実際の切削に必要な部分だけでなく、工具の保持や剛性を確保するための部分にも超硬を使用します。

もちろん、ソリッド工具にはメリットがあります。

工具全体が超硬で構成されているため、高い剛性を確保しやすく、工具形状によっては一体構造ならではの安定性を得ることができます。

しかし、**「その工具に本当に全長・全体の超硬が必要なのか?」**という視点で設計を見直すことで、コストを抑えられる可能性があります。

「超硬を減らす」という選択肢

工具のコストダウンを考える際、まず検討したいのが構造の変更です。

例えば、超硬ソリッドで製作していた工具を、超硬チップをロー付けした構造へ変更する方法があります。

ロー付け工具では、工具の切削に必要な部分に超硬チップを使用し、それ以外の部分には鋼などの材料を使用します。

つまり、

必要な部分には超硬を使う。
必要以上の部分には超硬を使わない。

という設計です。

これにより、工具として必要な性能を確保しながら、使用する超硬材料の量を減らすことができます。

特に、工具形状が大きい場合や、超硬ソリッドで製作すると材料使用量が多くなる工具では、構造変更によるコスト低減を検討する価値があります。

性能を維持するには「どこに超硬が必要か」が重要

ただし、単純に超硬を減らせばよいというわけではありません。

切削工具では、切れ刃の剛性や耐摩耗性、加工するワークの材質、切削条件、工具形状など、さまざまな要素を考慮する必要があります。

例えば、切削に直接関係する部分には高い耐摩耗性が必要でも、シャンク部分まで同じ材料性能が必要とは限りません。

そこで、

  • 切れ刃には超硬を使用する
  • 切削に必要な剛性を確保する
  • シャンクなどは鋼材を使用する
  • ロー付け部の強度や形状を考慮する

といったように、それぞれの役割に応じて材料を使い分けます。

これは単純な材料変更ではなく、工具全体の構造を見直す設計変更です。

「超硬だから高い」のではなく、「どこに超硬を使っているか」を確認することで、コスト低減の可能性が見えてきます。

ソリッドからロー付けへ変更した事例

実際に、これまで超硬ソリッドで製作していた工具について、ロー付け構造への変更を検討するケースがあります。

例えば、リセス加工などに使用する特殊工具では、工具形状によって比較的大きな超硬素材が必要になる場合があります。

このような工具を超硬ソリッドで製作すると、切削に必要な部分以外にも多くの超硬材料を使用することになります。

そこで、切れ刃となる部分を超硬板チップとし、シャンク側を鋼材とするロー付け構造へ変更します。

この構造にすることで、工具として必要な切削性能を考慮しながら、超硬の使用量を抑えることができます。

もちろん、すべての工具をロー付けに変更できるわけではありません。

加工条件や工具形状、必要な剛性、使用環境などによっては、ソリッド構造のほうが適している場合もあります。

そのため、重要なのは「ソリッドかロー付けか」という二択ではなく、加工に必要な性能を満たしたうえで、最適な構造を選択することです。

コストダウンは「材料」だけで考えない

工具コストを考える場合、材料費だけに注目するのも注意が必要です。

例えば、工具価格を下げても工具寿命が短くなれば、交換頻度が増えて結果的にランニングコストが上昇する可能性があります。

また、工具交換による段取り時間や、加工精度の変化、再研磨の可否なども考慮する必要があります。

そのため、工具のコストを評価するときには、

購入価格だけではなく、工具寿命・再研磨・交換作業・加工時間などを含めて考えること

が重要です。

特に量産加工では、1本あたりの価格差だけではなく、一定期間に必要となる工具本数まで含めて比較することで、本当のコストメリットが見えてきます。

「今の工具が当たり前」とは限らない

特殊工具の場合、長年同じ仕様で使用していると、「この形状・この材質で作るもの」という前提が固定化されていることがあります。

しかし、加工方法や材料価格、設備、工具製造技術などは変化しています。

以前は超硬ソリッドが最適だった工具でも、現在の加工条件やコスト環境では、別の構造が適している可能性があります。

だからこそ、工具のコストを見直すときには、

「もっと安い材料に変更できないか」

だけではなく、

「そもそも、この工具構造は今の加工に最適なのか?」

という視点が重要です。

超硬を「減らす」ことが目的ではない

ここまで紹介した考え方で、最も重要なのは「超硬の使用量を減らすこと」そのものが目的ではないということです。

目的は、必要な性能を維持しながら、工具全体として無駄のない設計にすることです。

超硬が必要な部分には、しっかりと超硬を使う。

一方で、超硬でなくても問題ない部分には別の材料を使用する。

この材料の使い分けによって、工具の性能とコストのバランスを取ることができます。

工具の仕様を見直す際には、現在使用している工具の材質や形状だけでなく、「どの部分に、なぜその材料が使われているのか」を一つひとつ確認することが、コスト改善の第一歩になります。

特殊工具だからこそ、設計段階で見直せる

市販の標準工具とは異なり、特殊工具は加工内容に合わせて形状や材質、構造を設計できます。

そのため、工具コストに課題を感じている場合には、単純な値下げだけではなく、工具そのものの設計を見直すという方法があります。

「超硬ソリッドでなければならない」と思っていた工具でも、加工条件を確認するとロー付け構造に変更できる場合があります。

また、超硬以外の材料との組み合わせや、工具形状の変更、再研磨を前提とした設計など、さまざまな方向からコストを検討できます。

工具の価格が高い、超硬の使用量が多い、原材料価格の上昇が気になる――。

そんな場合は、まず現在の工具仕様を見直してみることをおすすめします。

「超硬を減らしても、必要な性能は維持できないか」

この視点から工具設計を見直すことで、これまでとは違ったコストダウンの可能性が見つかるかもしれません。

ハマツールでは、特殊切削工具の設計・製作から再研磨まで、加工内容や使用条件に合わせた工具をご提案しています。

現在使用している工具について「もう少しコストを抑えたい」「ソリッドからロー付けへ変更できないか」「超硬の使用量を減らしたい」といったお悩みがあれば、工具の仕様を確認しながら、構造変更を含めた改善方法を検討することができます。


まずは、工具の専門家に相談

現在お使いの特殊工具について、コストや構造を見直してみませんか?

「超硬ソリッドからロー付け構造へ変更できるか相談したい」
「工具のコストを抑えたい」
「現在の工具仕様が加工に適しているか確認したい」

など、工具に関するお困りごとがございましたら、お気軽にお問い合わせください。

加工内容や使用条件、現在お使いの工具などを確認し、コストと性能のバランスを考慮した工具設計をご提案します。

特殊切削工具の設計・製作・再研磨についてのご相談は、下記のお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

 

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